昨日も持っていた、まるで死神のように大きな鎌。


「それ…昨日の……」


微かに声が震えてるのが自分でも分かる。

鎌が怖いわけじゃない。



怖いのは彼の……。







…なんの感情も映ってない瞳。


確かに彼の感情は今までわかった試しがなかった。

でも瞳にはそれなりの感情が映るもの。


なのに、今の彼からはなんの感情も伝わってこない。

今の彼なら、なんの躊躇いもなく私を殺すだろう。

それが怖い。


「…僕が、怖い?」


まるで私の心を読んだかのように核心を突く彼は。

軽く首を傾げながら問いかけてくる。


「うん…怖いよ」


それに頷くと、そうだよな…と言って悲しげに微笑んだ。


――…どうして、そんな悲しそうな表情(カオ)するの。


――…どうして私は。

そんなあなたを見て、胸が痛むの。



少しの間沈黙が続くと、やや俯いていた彼が、ふいに顔を上げた。

そして、私に何かを言おうとしたところで、自分の斜め後ろを目だけで見て。

口をつぐんだ。


「…あんたには悪いけど、死んでもらう」


「い、いやだと言ったら?」


「そんなの、僕には関係ないよ。昨日のことを見られた以上…」


南くんは、そう言いながら鎌を振り上げると。


「……生かしておくわけにはいかない…っ」


その言葉と同時に鎌を降り下ろした。


「う、わ!危なっ」


私は間一髪それを避けると、奇跡的にバランスを崩さずに着地が成功した。


と、とりあえず。

交渉…しかないよね。

私は胸のところで拳を軽く握ると。

一歩下がって息を大きく吸い込む。

そしてゆっくりと吐き出して、交渉を始める。


「南くん…待って。落ち着いて?
と、とりあえず。鎌、下ろして?」


しっかりと目を見ながら、微笑んでみせると。

私に対する構えがなくなった。

まずはほっと胸を撫で下ろして。

今度は一歩彼に近づく。