「ねぇ、どこ行くの?」


「………」


はあ…、もう何度目かも分からないため息。

結局放っておくわけにも行かなくて、ついてきちゃったけど…。

ほんとに南くんはどこへ行くつもりなんだろう。

さっきから何を聞いても、言っても、返ってくるのは沈黙。

ずっと何も言ってくれない。


こんなことなら、一人で戻ればよかった。

今から行っても学校間に合わないだろうな…。

携帯を開いて、ディスプレイの時計を確認すると。

もう1時間目が始まってる時間。

はあ…とまた盛大なため息をつくと、あることに気づいた。


「ここ…圏外なの?」


「…そうだよ」


「どうして?」


周りには電柱だってあるのに。

どうして圏外なのか。

首を傾げると、南くんは止まって、背を向けたまま言う。


「何か他に、もう1つ気がつくこと…ない?」


「もう1つ?」


携帯を閉まって、なんとなく辺りを見回す。

すると。


「静か…?」


そう、いやに辺りが静かすぎる。

確かにこの時間じゃ学生はいないだろうけど。

まるで人の気配がない。


「静か、ね……まあ80点くらいかな」


80点って言われても…。

気づいたことって言ったらそれくらいしかないし。


「分かんないよ。人口が少ないとか?」


考えるのに疲れた私は、手を後ろで組ながら小石を蹴る。

蹴った小石はガードレールの下をくぐって下に……――。


「え…?」


落ちずに消えた。

一瞬消えた場所が歪んだようにも見えたけど…。


「なに、今の…」


私は勢いよく頭を振ると、今度は大きめの石をガードレールの外に投げてみる。

すると、投げつけた場所の周囲が歪んで。

まるで吸い込まれるように石は消えた。


「嘘…でしょ」


呆然と石が消えた場所を凝視していると。

ずっと背を向けていた南くんがようやく振り向いた。


「ちょっと、壊さないでくれる?」


「僕が昨日一晩かけてつくったんだからさ」


不敵な笑みを浮かべて左手に持っているのは。