春、橘綾奈(たちばなあやな)はH高校に入学した。

入学してから1週間後。

委員を決める時間に、綾奈は学級委員に推薦された。

中学からの友達、由宇が私が中学で生徒会をしていたことをみんなに言いふらしていたからだ。

それを聞いた担任の皇亜紀(すめらぎあき)先生は

「そうか。じゃあ橘、やってくれるか?」

とわざわざ座っている私の目線に合わせるようにかがんだ。

一斉にみんなの視線が綾奈に集まる。

「分かりました。やります。」

「ありがとう。じゃあ、1-3の学級委員は橘でいいか?

いい人は拍手してくれ。」

パチパチパチパチーー

「じゃあ、決定だな。よろしく、橘。」

綾奈の目の前でニコッと皇先生は微笑んだ。

切れ長の目が少し垂れるのがかっこよさよりも可愛さを出していた。

その姿に女子生徒はやられてしまい…

「きゃあ!先生やばい!」

「普通にしてる時かっこいいのに笑うとかわいい!」

なんていうこそこそ話がひっきりなしに聞こえてきて…

先生の顔を間近で見ていた綾奈はそのあとの休憩時間に質問攻めにあうのだった。




そしてその1週間後、初めての学級委員会があった。

担当の先生は綾奈のクラス、1-3の担任の皇先生と2-5の担任の風山(かぜやま)先生、それから3-1の担任の柏木(かしわぎ)先生。

各学年に担当は一人ずつ、というわけだ。

ちなみに1年生から3年生まで各学年6クラスずつある。

今日は初日のため、各クラスの委員が自己紹介をして、

今後の予定を発表して終了。

「ありがとうございました。じゃあ、次1-3の橘さん。」

「はい。1-3の委員の橘です。1年間よろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。次1-4の松井さんーーー」

そんな感じで自己紹介は終わり、次は先生の自己紹介。

まずは1年担当の先生から…と皇先生が立ち上がると…

女子生徒から悲鳴が上がった。

「きゃー!皇先生だよ!」

「先生が担当なんて最高!」

「かっこいいー!クール!」

「やばいやばい!かっこよすぎー!」etc…。

確かに顔はいいと思うけど…と思っていると、皇先生は全く気にした様子はなく、

「はい。1年担当の皇です。1年間よろしく。」

またきゃー!!という悲鳴が上がった。

(!?きゃーきゃー言い過ぎでしょ!)

「ね、なんで皇先生ってあんなに人気あるの?」

「え?知らないの!?皇先生といえば…

切れ長の目に高い鼻、薄めの唇。その口から発せられる美しいハスキーボイス。

普段はクールなのに笑うと切れ長の目が少し下がってかわいくて…。

眼鏡をかけてるとちょっと冷たい感じがするんだけど

話しかけるとすごく優しく相手してくれるし、

授業は分かりやすいし、運動神経いいし!」

「そ…そんなに…?」

「うん!ほんとにかこいいんだよ!

橘さん1-3でしょ?いいな~皇先生が担任なんて」

まるで夢見る乙女のようになっている1-4の新城さん。

の後ろから突然現れた皇先生。

「そんなに俺が担任のほうがよかった?」

(そんな言い方したら他の女子が… 

「きゃー!先生!!」

ほらやっぱり)

思わず耳をふさぐ。

(うるさい。皇先生ファンすご…)

「ちょ…みんな静かに!」

(あなたが原因ですから!)

でも先生の一言で一斉に静かになる女子たち。

でも慣れているのかほかの男子と先生たちは呆れたように見つめている。

「委員会終わったよ。早く帰らないと下校時間すぎるよ。」

その一言でみんなはまた一斉に鞄をもって「先生さよーならー!」

ときゃあきゃあ言いながら帰って行った。

(いったい今のはなんだったの…?)

「橘?お前も帰れよ?」

「あ、はい。すみません」

また目を合わせて言ってきた。

帰ろう…としたが…

「あのー…先生…??」

先生が私の前から動かない。

「お前…なんか見たことあるんだよな…」

「え…?」

背筋に悪寒が走る。

(まさか…)

だがその瞬間先生は笑って

「気のせいか!」

というと、早く帰れよーと言いながら生徒会室を出て行った。