弱虫男子




そんな幽霊部員な僕でも、両親は僕が毎日部活へ行っていると思っているらしい。
どうも、僕の両親は僕を日本男児に育てたかったらしく、『一度決めたことは何が何でも貫き通す』と口うるさいのだ。

まぁ、僕が日本男児なんて無理な話だ。

そんなことは両親も百も承知だろう。
僕が弱虫なことも、身長が低いことも、運動が苦手なことも、目立つことが嫌いなことも、自分の考えを上手く言えないことも、両親は知っているし、別にそれを責めたりはしない。

僕の気弱な性格は治せるものじゃないし、それは僕の個性だから矯正する必要もない、とあくまでも僕個人を尊重してくれている。

だからこそ、弱虫でもチビでもノロマでも地味でも口ベタでも、『一度決めたことは何が何でも貫き通す』優しい人になりなさい、と言う。

僕はそれだけでも守りたいと思うから、いつも図書室で時間を潰し、それから帰る、という生活を送っている。

本当はきちんと部活へ出れば良いのだろうが、どうしても気が進まないのだ。
僕は絵を描くことが嫌いだから。

あの白いキャンバスに〝自分の絵〟を描くことが、どうしても苦手だ。

なんで美術部に入ったんだろう…。

美術部に入ってしまったことを後悔している。
絵が嫌いで美術部に入るバカなんて、そうそういないだろう。

「はぁ…。」

本日何度目か分からない溜め息を小さく吐き出して、6時過ぎを指す時計を一瞥すると、

「さようなら。気を付けて。」

毎日言われ慣れた図書委員の声をバックに、いつも通りの時間に図書室を出た。