体育でもないのにみんな汗だく、という暑すぎる数学の時間を終えて、放課後。
部活へ行く人や、バイトへ行く人、遊びに行く人は足早に教室を出ていき、何の用事もない人はダラダラと、少しだけ涼しさを取り戻した教室に居座っている。
美術部(仮)の僕に、急いで帰る理由はない。
けれども僕は、周りの人に流されるように、少し足早に教室を出た。
何か月ぶりか分からない部活へ行く訳ではない。
教室を出て、すぐ上にある美術室なんて見えないフリで階段を下り、わざわざ人通りの少ない渡り廊下を通ってまた廊下へ出る。
廊下の壁に貼ってあるポスターは、どこか古めかしく、画鋲がいくつか落ちていた。
僕はそれを気にすることもなく歩き、廊下の奥にひっそりと存在する、図書室へと足を進めた。
図書室の中は相も変わらず静かで、やはり涼しかった。
僕は適当に本を選ぶと、それを小脇に抱えながら、僕の指定席のようになっている馴染みの席についた。
僕は図書室が好きだ。
雑音が少ないし、どこよりも涼しい。
美術室なんかよりもよっぽど良い。
僕は、あの美術室特有の絵の具の臭いやら、少し汚れた床やら、どこを見ても飾られている芸術作品やらがとことん嫌いだ。
部員の半数以上が幽霊部員で、活動という活動は特にない。
正直、美術部員を全員言えるか、と聞かれたら、答えられる自信がない。
