弱虫男子



どんなに思考を巡らせても、僕の頭の中に正解らしきものは見付からない。
それどころか、僕のネガティブ心が物凄くざわめく。

ケンカできるような友達は今までいなかった。
ケンカをしなければ、仲直りだってしたことはない。
そもそもこれはケンカと言えるのだろうか。

ここで僕が1人、悶々と考えても答えが見付からないことは分かっていたけど、今の僕に考えるなっていう方が無理だ。

千晃なら良いアドバイスをくれるのかもしれないと思い、ケータイを取り出そうとして止めた。
僕は今授業をサボっているのだ。
今メールなんてしたら千晃からの尋問を受けかねない。

千晃には落ち着いたらちゃんと事情を話さないといけないな…。

そう思って、腕の中に顔を埋めた時――。

「なんだ、こんな所にいたのか」

「っ、」

一瞬、先生が探しに来たのかと思い、僕は慌てて顔を上げた。
しかし、僕の予想は大きく外れた。
それも飛びっきり悪い方に。

今すぐ逃げ出したいような気持ちを抑えて、僕は相手の方に体を向けた。
そして、努めて冷静な口調で、

「こんな所でサボりですか?部長。」

僕の目の前に立つ部長へ、精一杯の皮肉を口にした。

部長は、ふむ…と思案顔で僕を見回し、そのあとにニッコリと微笑んで見せた。
何故だか鳥肌がたった。

微笑む割には何も言ってこないから、余計に居心地が悪い。
仕方なく、僕から口を開いた。

「……なんですか、その顔は。」

「いや、なに、気にしなくて良いよ。」

「そんなこと言われても気になりますよ。理由を話すか、その笑顔を止めるか、どちらかにして下さい。」

「この笑顔は自然と出ちゃうんだよ。君なら泣いているかとも思ったけど、案外君は、私が思うほど弱くはなかったらしい。」

「え?」

部長の口振りから、どうやら部長は僕を探していて、しかも僕が授業をサボった理由まで知っているらしかった。

だから僕は不満気に言う。

「なんで知ってるんですか。というか、よくココが分かりましたね。」

「私は実は人の心が読めてね、君が凹んでいたから探しに来たんだよ。今が先輩としての役目を果たす時かと思ってね。」

部長は至って真面目に言うものだから、危うく信じかけた。
部長はサラッと話しを流すのが得意だから、僕が口を挟む前に、「だけど、」と続けた。

「君がココにいるのはすぐ分かったよ。廊下で女子が騒いでいたのを聞いたからね。初めて見る、カッコ良い人が図書室の方に向かったってね。良かったね、その髪型は好評みたいだよ」

部長の人をバカにするような物言いに、皮肉を感じた。
さっきの仕返しだろうか。

「…部長は驚かないんですね。僕の髪型。」

「だから言ったろう?私は人の心が読めるって。だから、女子が色めき立っている相手は君だとすぐに分かったよ」

「冗談を言いに来たのなら、授業に戻った方が良いですよ。」

「私が嫌いなのは分かるけど、私は可愛い後輩の為に2限目からコッソリ抜け出して1時間も君を探してあげていたんだ、少しは労ってくれても良いんじゃないかな?」

部長が2限目から僕を探していたことには素直に驚いた。
あと、今が3限目に突入していることも今知って後悔の念を抱き始めてる。

「どうして部長が?」

また人の心がどうとか言って誤魔化されるかとも思ったが、聞かずにはいられなかった。

すると部長は、本当に僕の心を読んだみたいにフッと笑い、

「おいで。君に見せたいものがあるんだ。」

そう、先立って歩き始めた。

僕の意見なんて全く聞きもしない横暴さに呆れつつも、取り敢えずは部長の命令に従うことにした。