弱虫男子



僕の変化を優しく受け止めてくれる誰かが――できることならば河本さんが、僕の隣に居て欲しい。
そうすれば、僕も安心して笑うことができる。

その考えに、我が儘だなぁ、と我ながら呆れた。

「優希は?」

不意に千晃が訊ねた。

「え?」

その質問の意図がよく分からずに訊き返すと、

「優希は何になりたいの?」

先程の質問に少し言葉を付け足して、千晃は再び僕に訊いた。

この話の流れからして予想はしていた話題に、思わず溜め息が出そうになった。

「………僕は、…」

もちろん、僕に将来の夢など存在せず、ましてや人に語れるような立派な目標だってない。

僕は言葉に詰まり、それがなんだか情けなくて視線を自分の足元へと落とした。

「ないの?なりたいもの。」

僕は肯定の意味を込めた無言で返した。

普通の人なら、これはシカトと受けとるのだろうが、僕の性格を理解している千晃は苦笑をもらした。

「そんな顔、するなよ。別に俺は教師じゃないんだから、お前を責めたりしないよ。夢を持てって考えを無理矢理押し付けたりもしない。だって、夢なんて案外すぐに叶ったり、変わったり、諦めたりして辿り着くものだろ?誰かに言われて決めるなんて可笑しいよな。そんなのは夢って言わないよ。」

子供を諭す先生のような優しい口調で言われてしまえば、やはり情けない気になった。
同い年の、しかも千晃に、――千晃だからこそと言うべきか、その言葉は嬉しくも、情けなくもあったのだ。

「情けないとか思ってんだろ?」

相変わらず、千晃は僕の心を見透かしているんじゃないか思ってしまうような、そんな言動にドキリとする。

「…千晃は夢があって、それに向けて頑張ってるのに僕は…なんの夢もないし…。」

「ぷへー。お前のことだ、どうせ自分でもよく分かってないんだろ?自分のこと。」

「…っ……千晃って、いつも変なところ鋭いよね。」

どうも僕は、千晃には敵いそうにない。
人知れず嘆息しながら、足を組んで偉そうに笑う千晃を見た。