弱虫男子



扇風機もなく、ましてやクーラーなんて立派な電子機器がない部屋は、窓を全開にすることで涼しさを得ている。
あまり得られている気がしないのは、気のせいだと思いたい。

まるで教室にいるような生温い空気に包まれながら、生温い烏龍茶を口に運んだ。

「生温い…。」

「安心しろ、俺のコーヒーもだ。」

言って、千晃はコーヒーの缶をチャプチャプと揺らしながら、その生温い感覚に顔を歪めた。

「コーヒーより烏龍茶の方が酷いよ。コーヒーのホットはあるけど、烏龍茶のホットはないしね。」

「コーヒーは熱くても冷たくても美味しい飲み物だがな?生温いという中途半端な温度は許さないクールな奴なんだよ。」

「まぁ確かにクールな飲み物ではあるけど…あ。」

僕は小さく声を上げた。
待ちわびた風が、窓の方から緩く吹き、僕の髪をそよそよと揺らした。

「涼しい」

短くなった髪は、風に煽られて僕の頬をなぞるものだから、少しこしょばゆい。

千晃が返事もロクに返さずに、黙って僕の顔を見つめているのに気付き、「な、なに?」と僕は千晃に訊ねた。

数秒後に、千晃はグイッと生温いコーヒーを喉に流し込んで、

「明日香の凄いところはさ、その人に合った髪型を見付けて、それを表せる腕があるとこなんだよ。」

「どうしたのさ、急に。」

「…いんや。なんか、改めて遠いなってことを見せつけられた気がして、さ。」

そう、なんだかんだ言って飲み干したコーヒーの缶をテーブルの上に置いた。

弟思いの明日香さんが、千晃のこの台詞を聞いたら心から――顔には決して出さないだろうが――喜ぶだろうな、と僕は思った。