「まーた、アレ、見てたんだ?」
アレ、と言って千晃が指したのは、もちろん彼女で。
「なっ…ちが…!」
僕が必死に否定しても、千晃はニヤニヤと笑って全く聞く耳を持たなかった。
こんな必死に否定しては「はい、そうです。」と言っているようなものだ、と心の中で思いながらも、僕の顔は熱くなる一方。
「恋する乙女だねぇ~優希ちゃん?」
「止めてってば…」
まるでハートがつきそうな千晃の物言いに、僕は項垂れて返した。
こうなった千晃に何を言っても無駄なのだ。
すっかり千晃のペースに流されていた時、
「おらー、座れー」
先生の声が教室に響いた。
千晃は一気に眉を八の字にして、「うぇー…授業だるー」と心底めんどくさそうに言い、自分の席へと戻って行った。
助かった。
あまり恋バナなどという類いのものは好きではなく、自分の意見を言うのが苦手な僕にとっては、嫌いな話題でもあった。
数学の教科書を出し、今日の授業に集中しようと黒板とにらめっこを開始する。
けれど、教室内の蒸し暑さが僕の体に張り付き、僕の額にじんわりと汗を滲ませた為か、授業に集中しようにも汗ばんだ体が気持ち悪く、勉強なんてしてられるような状況ではなかった。
外へと視線をやると、この暑さを作っている太陽が嘲笑うようにギンギンと僕らを照らしつけていた。
