弱虫男子




「はーい、奈美さんまた暴走してるよー。いい加減学んでねー」

「はっ!私としたことが!」

「1つ賢くなれて良かったネ。この前も教えたけどネ。」

「ぐぅ…」

年齢的には神崎さんの方が上なのに、千晃の方が大人みたいだ。
身長も千晃の方が大きいし、端から見たら千晃の方が年上に見えるのだろう。

他のお客さんはクスッと微笑みながら、温かい視線を送ってくる。

「コイツのカット明日香にやらせて。」

明日香、という名前に、神崎さんはぎこちない笑みを浮かべた。

「明日香さん、今日お休みだよ…?」

「でも来てるだろ?」

即座に返した千晃に、「来てる、けど…さぁ…。」と次に来ると思われる言葉に身構えた。

「じゃあ呼んで?」

神崎さんは、「言うと思ったー」と大袈裟に頭を抱えた。

「明日香さん怒るからヤダよー!怒られるの私なんだからねー?!」

「イイじゃん。奈美さんだから言ってんだよ。ね?可愛い後輩のお願いだよ?」

こんな時ばかり年上ぶるな、という顔をしつつも、神崎さんは「分かったよーぅ…」と眉を八の字にした。

「やった!ありがと」

「ほーんと、ちぃちゃんはズルいんだからー」

少し不満気に何処かへ向かった神崎さんを確認すると、千晃はすぐ近くのソファに腰を下ろした。
その隣をペシペシと叩くのは、僕にも座るよう言っているのだろう。

「ねぇ、千晃」

千晃は手に取った雑誌をパラパラとめくりなが、んー?と視線はこちらに寄越さずに答えた。

「僕が髪切ったら似合うと思う?このままの方が良いと思う?」

「切った方がイイと思うから、ここに連れて来たんだろー。」

「まぁ、そうなんだけど。」と僕が返すと、「まーだ悩んでんのか?」と少し呆れたように千晃が言った。