弱虫男子




…一度も言えたことはないけど。

「ね?だから俺に任せてよ。俺がお前を変えてやるから。」

「それは断固拒否するけど。」

危なく流される所だった。
青春友情ドラマみたいな千晃の流れに逆らった僕に、千晃は「ぶーぶー」と口を尖らせた。

「体育祭前にしくじったらヤダもん。恥かくのは僕なんだから。」

「どーせ足の遅さで恥かくって。」

「僕変わるって言ったでしょ。それは外見だけじゃなくて中身も、だよ。」

体育祭までは残り1ヶ月とちょっと。
今からじゃ遅いかもだけど、できる限りのことはしたい。
一生懸命走ればビリだって抜け出せる。

走る練習も、イメチェンも、分からないことだらけだけど、僕は変わるって決めたんだ。

そうしたら、もし、ちょっとでも変われたなら、僕は河本さんに近付けるだろうか。
千晃の言った通り、僕自身の問題もあるし、まだまだ壁は大きいけれど、今日から頑張れば少しは良くなる筈だから。

あと何年か、それとも何日か。
それは僕次第で、僕の心の問題。

でも僕はきっと大丈夫。
僕には、ちゃらんぽらんだけど優しい友達だって、僕のことをいつでも心配してくれる両親だって、僕が憧れる好きな人だっている。

流石にこんなことを千晃に言ったら、ケラケラと腹を抱えて笑われるに決まってるから言ってやらないけど。

「優希、変わったな。」

「え…まだ何もしてないけど。これから変わる予定だけど。」

「見掛けじゃなくて……いんや、なんでもない。優希は優希だからなー!」

「優希は優希ってなに…。」

「言葉のまんまの意味だよー弱虫君」

「これから弱虫じゃなくなるんですー。卒業までには、もう千晃に弱虫君って呼ばれないようになる!絶対に!」

「おー、その調子で、将来の夢美容師の千晃君に髪でも切ってもらおー!」

「それは流石にハードル高い。」

なんでだよー、と千晃はふくれっ面だ。
が、すぐに何か思い付いたように、ポンッと手を叩いた。
閃き方古いな。

「じゃあ、俺がオススメの美容院に行こう!あそこなら多少の融通も聞くし!それならイイだろ?」

「まぁ、千晃が切るくらいならそっちの方が良いけど。」

「ずっと思ってたけどさ、俺にどんだけ切られたくないのさ。お前。」

千晃はブツブツと文句を一通り言ったあと、

「よし、そうと決まれば今すぐ行こうか!」

切り替えが速いのも千晃の良い所だ。
時には悪い所にもなるが。

「急に行って良いのー?」

「おっけっけー!多少の融通はきくって言ったろ?」

軽くウインクを決めながら、俺ってば出来る男っぽい!と言う千晃に、どうしても不安を隠しきれない僕はどうすれば正しいルートへ進めるのでしょうか。