「優希くんだって結構顔に出てるよ。すごい可愛いと思う。」
僕は苦笑した。
可愛いと言われるのには慣れたけど、何度言われても、あまり嬉しいものではない。
「可愛いなんて止めてよ。僕、これでも一応男だよ?」
河本さんが布団に顔を埋めててくれて良かった。
今の僕は、女子がよく可愛いと言ってくる、拗ねた表情をしていたから。
あんまり好きな女の子に見られたくないって思うのは、僕が男だって証拠だ。
「それに、可愛いっていうのは僕が言う台詞だよ。」
「…可愛いって言われないもん。」
河本さんの拗ねたような口調が子供っぽくて、やっぱり可愛いなぁ、と頭を撫でたくなった。
チラリと横目で僕を見ていた河本さんと目が合うと、案の定、彼女は拗ねたような表情をしていたから、
「河本さんは可愛いよ。」
無意識のうちにそんなことを言っていた。
眼鏡があってもなくても普段からそんなこと言わない上に、彼女が思いっきり顔を反らすから、僕は恥ずかしいような戸惑うような、そんな慣れない感情をもて余していた。
「………そういうとこ、ズルい。」
彼女はグリグリと、また布団に顔を埋めながら小さく呟いた。
「可愛い。」と、もう1度言ってしまいそうになる。
無意識に口から出そうになった言葉を飲み込んで、僕は言った。
「もうそろそろ帰った方が良いよ。保健室の先生が帰って来るの待ってたら暗くなっちゃいそうだから。」
本当は、一緒に帰ろう、とそう誘えれば良かったのだけど、こんな時ばかりは素直になれないのが僕だ。
それに、あんまり一緒にいると、彼女の無意識過ぎる発言に僕の心臓が持たない気がした。
「…うん。」
河本さんはゆっくりと立ち上がると、机の上に並べてあった、僕のではない方の鞄を取った。
彼女は僕に「またね」と手を振って扉に手を掛けて、
「優希くんは可愛いよ。…可愛いし、カッコ良いんだよ。」
最後にそんなことを笑顔で言ったから、僕の心臓は悲鳴を上げていた。
