その笑顔が心地良いような、温かいような、そんな風に僕の目には映った。
「荷物も持ってきてるし、あ、保健室の先生今会議だから、そのうち帰って来ると思うよ。一応先生に報告してから帰るように言われたから。」
わかった、と言いかけて、河本さんの言葉にハッとした。
「報告してから帰るように言われたって…もしかしてずっと待っててくれたの…?」
「うん。さっきまでは千晃もいたんだけど、どうしても外せない用事があるって言って帰っちゃった。」
ニヤニヤと笑いながら言う千晃の顔が浮かぶ…。
千晃のことだ、僕と河本さんを2人っきりにでもしたかったのだろう。
「ほんっとに、ごめん…!僕のことなんて気にしなくても良かったのに…。」
「優希くんが謝ることないよ!私が勝手に待ってただけだから。ね?」
「う、うん…。」
やっぱり河本さんは優しくて、僕の心を惑わせる。
さっきとは違う、心臓の鼓動の速さで、僕の声まで震えそうだった。
「優希くん。これ読める?」
唐突な彼女の問いに僕は首を傾げた。
これ、というのは、たぶん彼女が指しているポスターのことなのだろうが、このポスターがどうしたというのだろうか。
別段、難しい漢字を使ってるわけでも、古代文字で書いてるわけでも、ましてや外国語なわけでもない。
僕はますます首を傾げた。
「………ガスの元栓チェック、完璧、に…?」
「じゃあ、これは?」
「えっと…火の後始末をするのは貴方だけです。もう1度、何度でも見直そう。…?」
「読めるんだ!」
彼女は嬉しそうに言った。
僕は文字も読めないと思われてたのか、はたまた、彼女は読めないのか。
たぶん、それはないだろう。
