弱虫男子





「なんだお前、今日は一段とやつれてね?」

朝、僕を見るなり開口1番に、千晃はそう言った。

「まぁ…うん。色々あって、ね。それより千晃、最近朝早いね。」

「まあなー体育祭近いから走るようにしてんだよ。女子の前で恥かきたくないしな。」

千晃は朝っぱらから動物クッキーをポリポリと食べながら、「走ったら腹減る」と。

「別に、練習なんてしなくても足速いじゃん」

「高校は帰宅部だから体なまってんのー中学の頃のフレッシュな俺とは違うのー何もないとこでコケそうになるのー不安なのー」

「え。普通になるよ。何もないところで全然コケるよ。」

「ゴメン。なんかゴメン。お前にゃ日常的な1コマだったのか、お爺ちゃん。」

「まーた、そうやってバカにするー」

千晃の動物クッキーを1つ奪い取る。
あ、うさぎだ。
可愛いとは形容し難い、けれどもうさぎだとは確実に分かるそのクッキーを口に放り込む。

「あーあ、中学生の頃は良かったよなー。俺だってサッカー部で活躍してたっちゅーに。」

「そうだっけ?」

「そうだよ!女子にキャーキャー言われて楽しかったのになー」

「高校でも続ければ良かったのに。」

「いや、それはダルい。正直スポコンなんてかったるい。」

千晃は根性がないから、スポコン系は苦手だ。
サッカー部だって女子にモテたいから入ったようなもので、女子がいない日はやる気を出さないめんどくさい奴だった。

けど、女子は適当に勘違いをして、いつもは気だるげなのに時々本気になるところがカッコ良い、と。
千晃は、Mr.雰囲気イケメンである。
だから、ところどころ残念だ。

千晃がトントンッと人差し指で机を数回叩き、僕の意識を自分へと向かせた。

「なぁ、お前、もう絵は描かねぇの?」

突然、本当に突然でビックリした。
昨日そのことについて悩んだばかりなのに、タイミングが良いのか悪いのか。