片手で数えられる程の人間しか残っていない教室を見回し、教室を出た。
行き先はもちろん図書室だ。

いつもと同じルートで図書室へ向かった。

最近は美術についての本を読むことが増えた。
一応、練習のつもりで。

しかし、問題はキャンパスだ。
さすがに、白いコピー紙に描いたものを見せる訳にも行かないだろう。

期待させて待たせているのだから、そこはきちんと、キャンパスと美術室に封印されている僕の筆を使いたい。

そうは思っているのだけれど、なかなか美術室には行く気がしないし、正直みんなからどんな目で見られるのかが不安で仕方ない。
今さら部活になんて行ける気がしない。

新しく入った新刊の中にあった、世界と美術の歴史、と書かれた本を取りだし、席に着く。

ペラペラと本のページはめくっているものの、僕の意識は本になど集中していなかった。

毎日毎日図書室で時間を潰している僕を、美術部員達はどう思うだろうか。
というか、部長さんは僕を部室に入れてくれないんじゃないだろうか。

多くが幽霊部員の美術部は、常に活動している部員数は少なく、部長さんはいつも大変そうだった。

美術部が活動中に行くのは避けよう。
図書室で6時まで時間を潰して、それから部室へ行けば良いかな。

「はぁ…。」

どうにも面倒くさい。
静かすぎる図書室にいると、色々な思考が巡り、溜め息をつくことが多い気がする。

それでなくても、毎日のようにある体育祭の練習で疲れているのに。

僕は、また出そうになった溜め息を飲み込んで、目の前の本に集中することにした。