その日の授業には全くと言って良いほど身が入らず、気付けば6限目の『体育祭の話し合い』の時間になっていた。
朝、彼女と登校していたのを誰かに見られたのか、その話を聞いたらしい千晃が僕をからかってきたのが原因だろう。
休み時間の度に「あの弱虫な優希くんがねぇ~成長したねぇ~」と五月蝿いのだ。
けれど、6限目に近付くにつれ、僕の意識は『体育祭の話し合い』へと傾き、『体育祭について』と書かれた黒板の前に委員長が立つ頃には、僕の意識は完全に体育祭へと持って行かれていた。
「では、これから体育祭の各個人種目を決めたいと思います。」
委員長が言って、副委員長が黒板にスラスラと文字を書き始める。
今年は、100、200、800メートル走の基礎+障害物競争か借り物競争か運命走。
それと、クラス対抗は、学級リレーと玉入れ。
各個人種目は最低でも2つ、最高3つまでとなっている。
とりあえず100メートル走は確定として、足の速さが関係ないのは…全部、かな。
障害物競争は足の速さが関係なくても、運動神経は大いに関係しそうだ。
まず跳び箱を跳び、それからマシュマロ探し。
マシュマロを探し終えた者からハードルを飛び越え、網を潜りゴール。
跳び箱の時点で僕は無理だ。
障害物競争却下。
借り物競争は以前、生徒会の個人的な趣味で定番の『好きな人』が入っていた。
先生方は嫌な顔をするが、生徒からは大人気だったから、たぶん今年も1枚くらい入っていると見た。
借り物競争却下。
運命走は、まぁ、運だ。
僕の運が良ければ簡単なのに当たるけど、運が悪ければ最悪なものに当たるだろう。
簡単なものでは、ジャンプでゴールへ向かうとかその場で5回回るとか。
難しいものでは、8段の跳び箱、跳べない場合は10秒間その場に立ち尽くすという最悪な仕打ちだ。
運命走却下。
全てに頭の中で却下を下したこの間なんと0.5秒。
無理だ。
僕は瞬間的に悟り、絶望した。
去年は運命走に出たが、僕の運の悪さが僕を呪い、見事に『跳び箱』を引き当てた。
もちろん僕は10秒間立ち尽くすという最悪な仕打ちを受けた。
もうあれだけは嫌だ。
笑いは取れるが、それを取って嬉しがるのは芸人かクラスの人気者くらいだ。
女子には「本当、可愛いなぁーもう!」と言われるし、男子には「相変わらずよわっちぃ」とバカにされた。
千晃が1番僕をバカにしていた。
最悪だった。
