朝はいつもより気だるくて、どうにも起きる気がしなかった。
そのせいで、僕はいつもより少しだけ遅い登校をしていた。
トボトボと人通りの少ない朝の道を1人で歩く。
結局、体育祭は何に出るのか決められないままだった。
今年の競技が何かも分からないままだし、それを見てからでも遅くはない。…と思う。
二人三脚とかあったらヤダなぁ…。
言葉通り人の足を引っ張りそうで。
「あれ?優希くん?」
ボーッと考え事をしながら歩いていた僕の後ろから、いつも遠くから聞いていた声――河本さんの声が聞こえた。
驚いて振り向くと、
「おはよー」
と、河本さんが片手を上げて、僕のすぐ後ろに立っていた。
いつにも増してキラキラな笑顔に胸がドキッと大きく脈打つ。
「通学路で会うの初めてだねー、今日は少し遅いんだ」
「う、うん…」
「歩きってことは、家この辺なの?」
「そう、だよ…。」
「じゃあ、私の家とも近いかもねー」
僕は緊張からか短い受け答えしか出来ない。
これだけでも精一杯だ。
突然の彼女の出現についていかない頭で、彼女の質問にYesかNoで答える。
いつもは会わないのにどうして…。
僕は彼女に会う為に朝早く登校する。
だけど、彼女と通学路では会いたくなかったから、わざと彼女よりも早く学校に来ていたのに。
会いたいのに会いたくないという矛盾から生まれた僕の登校時間が、今日の憂鬱な気分のせいで遅れていたことに気付き、僕は心の中で自分を呪った。
彼女と近付くと僕は僕でいられなくなるような気がするんだ。
いつもより早い鼓動と、彼女の優しさに惑わされて、僕は冷静に物を考えられなくなる。
そんな臆病な僕は、どうしても彼女の顔を直視することが出来なくて、少し俯いて彼女の声を聞く。
いつも遠くから聞いていただけの声が、今日は僕の横から聞こえる。
それだけでも僕の心は苦しかった。
彼女は僕の歩調に合わせて隣を歩く。
これは、学校まで一緒に行って良いということなのだろうか?
そうなら、すごく嬉しいと心の底から思う。
「もしかして寝坊?」
「いや…、寝坊、でなくもない…?」
どうしても起きたくなくて布団の中でモゾモゾしていたのは、寝坊、なのかな…?
なんて言って良いのか分からず口ごもる僕に対して、彼女は自分の頭を指して、
「寝癖」
と笑った。
「…っ。」
自分の顔が赤いのは分かる。
僕はすぐに赤くなるから、分かりやすい、と言われる。
だから、なんで赤くなったのかも赤くなったこともすぐに分かる。
けど、これは照れているのか、それとも恥ずかしいのか、僕自身でも分からない。
昨日もそうだった。
彼女といると分からないことが多い。
どう接して良いのか分からないんだ。
彼女に対しても、僕自身に対しても。
