弱虫男子




「お前まだ図書室に入り浸ってんの?」

帰りのHR前の休み時間。
千晃は呆れたような表情で僕を見下ろした。

「図書室は静かだし、いるだけで楽だよ。それに涼しい。」

「そんなだから体が鈍るんだぜ~?体育祭近いんだから、少しはクラスに貢献しろよ~」

「うるさいー」

体育祭という言葉に、僕は少し顔をしかめた。

体育祭は僕の1番嫌いな行事の1つで、毎年クラスには迷惑を掛けている。

みんなが何に出るか迷っている最中、クラスの中でダントツ最下位の僕はいつも安定の100メートル走。
あとは、なるったけ足の速さが関係ない競技。

運命走とか、借り物競争とか。
大玉転がしには嫌な思い出しかない。

あーぁ、憂鬱だなぁ。

体育祭の前から僕の心はブルーで、雨が降ってずっと延期になれば良いとさえ思っている。

「明日誰が何に出るか決めるらしーから、今日のうちに決めといた方が良いぞ。」

「えー。明日までに決めらんないよー…どれにも出たくないもん…。」

「ワガママ言うな!どうせお前は優先して好きなの選ばして貰えるからイイだろー、お前の足はとびっきりおせぇからなぁ~」

僕のとびっきり遅い走りでも思い出しているのか、千晃はクスクスと堪えるように笑った。

「足の速さなんて内申に響かないでしょー」

「体育の成績は内申に響くと思うけどー」

「うっ…それは…。」

それを言われては言い返す言葉もない。
お陰さまで僕の体育の成績は最悪です。

どうにかしないと、とは思っていても、そうすぐにどうにかなる問題でもない。
から、めんどくさい。

「まっ、ちゃんと考えとけよ~」

千晃はヒラヒラと手を降って、窓辺で駄弁っているクラスメートの輪に入って行った。

「ちゃんと考えとけよ」と言われても、何を考えれば良いのやら。
どんなに考えたって僕の運動神経は変わらないし、何に出たってビリだろう。

ビリにはもう慣れた。
だから別に、どうってことない。

帰りのHRで、担任からも体育祭の競技についての説明があると言われた。
本当、明日は憂鬱だ。

今日も図書室へ寄ってから家へ帰った。

いつもと変わらない日常。

少し違うことと言えば、朝の出来事と少しブルーな気分が混じって、本に集中出来なかったことくらいだ。