弱虫男子




「ちーあき!」

後ろから聞こえた声に千晃が振り向くと、その向こうから、スカートの短い女子が、自分のクラスでもないのに、堂々と僕達の元までやって来た。

校則で禁止なパーマをあてた頭に、よく分からない形のネックレスがチカチカする。

「あー!優里おっはよー!」

「ねぇ、今日の放課後ヒマ?」

「ヒマだよー」

「良かったぁー!じゃあさー…」

「あー待った待った。その話は廊下で。」

「?別に良いけど。」

千晃はニッコリと笑うと、少し不思議そうな顔をしているスカートの短い女子に何か耳打ちをした。
スカートの短い女子は少し頬を赤らめながら先に廊下へと向かった。

「お前、女の子の前で露骨に嫌そうな顔するなよー。それだからモテないんだぞ?男なんだから常に紳士な対応!これ大事!」

そんなに露骨に嫌そうな顔をした覚えはないが、あの子の香水の匂いが嫌だったのは事実。

「だって香水の匂いキツいんだもん。それに、千晃のは紳士って言うより、ただチャラいだけだよ。」

「喋れないお前よりはマシだろ」

「痛い…そろそろ眉間が割れる…。」

「眉間は割れねーよ」

千晃は「よいしょっと!」と、お爺ちゃんくさい掛け声と共に椅子から立ち上がり、

「お前も少しは喋る練習でもしろよ」

ペシッと軽く僕の頭を叩いた。

教室から出ていく千晃の後ろ姿は、やっぱり中学生の時よりもチャラくなっているような気がする。
本人は、特に何もしてない、と言っていたが、どうだか。

「喋る練習…」

少し痛む眉間をおさえながら、ポツリと呟いた。

無意識に呟いていた自分に驚きつつ、慌てて周りを見渡すが、誰も僕の呟きは聞こえていないようだった。

胸を撫で下ろしながら、朝からの嬉しさや不安を振り払うように、鞄から取り出した本を読み始めた。