逆光で顔ははっきり見えないけど 確かにそこには 菜緒がいた。 「…菜緒?」 「ドジ!」 「何で?」 「急いで走るから。道に財布落としてったよ!」 俺と最後まで電車が一緒なのが菜緒だけだから 託されて追いかけたとか 何か色々言ってたけど 菜緒のために準備されたかのような イルミネーションが 俺の胸をドキドキさせて いないはずの菜緒に 口許が緩んで それどころじゃなかった。