「私が前につけちゃった時は、クレンジングオイルで落としたけど。」

「クレンジングオイル?」

何ですかそれ、と続ける彼に説明する。

「化粧落としだよ。よくCMとかでもやってるでしょ。」

「あぁ、あれか。……けど俺そんなの持ってないですよ。」


また拗ねたようになる。口を尖らせるようなこの仕草はなんとも子どもっぽくて、普段さらりとした言動でさわやかな彼からはかけ離れている。

その態度を見て、もしかしたら末っ子なのかな、とぼんやり考える。


「誰が女の子が置いていったやつとかないの?」

「うーん、俺あんまり家に私物置かれるの嫌なんですよね。」

ほう。女の子を家に上げていることは否定しないのか。

まぁでも、あの島崎さんでさえ落としたくなるような彼だ。きっとさぞかしモテるのだろう。


すると急に彼が嬉しそうな、何かを企んでいるような表情に切り替わった。

そして椅子をカラカラと音をたててこちらへ寄せると、笑みを浮かべて口を開く。