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「大変だねぇ~、彩さん。浮気性の彼氏なんて持っちゃって」


「でしょ!本当にあり得ない、気持ちがどうであろうと浮気は浮気だっつーの!あの野郎、いっぺん地獄に落ちればいいのよ!」



ドンッ!と思い切り机を叩く。



あ。


いけない、いけない。


ここは私の家じゃないんだから、家具を乱暴に扱っちゃダメなんだった。



私は興奮気味の自分の心をなんとかなだめ、咳払いを一つした。



「ごめん、勉強の途中だったね。続きやろう」



目の前にいるのは、今年で中学三年になる近所の男の子だ。



木田晴哉。


私が家庭教師を受け持つ生徒である。