「...あ、ハイ」
目の前の女の子が可愛いことだけにしか気をとられてなくて、適当にそう答えたような記憶がある。
俺より頭ひとつぶんくらい背が低いその子は(まあ俺ももともとそんなに身長あるわけじゃないけど)、すらりとしたスタイルにすっぴんでも充分整った顔立ちをしていた。ラフなTシャツとショートパンツを身につけた彼女は、そんなふぬけた俺の返事に片眉を持ち上げてみせたが特に何も言うことなく、代わりに腕に抱いていたものを差し出してきた。
「これは...?」
「回覧板です」
彼女はやや尖った口調でそう答えた。
「あ、なるほど」
「これ、中身読んだらサインして、隣の301に回してください」
「あ、はい」
それだけ言うと、彼女が一礼して立ち去ろうとしたので俺は慌てて
「あ、あのっ!」
...呼び止めてしまった。
「...何か?」
女の子が振り替える。やっぱりまだ不機嫌そうだ。うわ、最悪。こんな可愛い子が住人なのに、出会って早々嫌われるなんて。な、なんとかしてマイナスイメージを払拭できる方法はないのか?
とりあえず、とりあえず何か...そうだ。
俺は最高に人当たりが良さそうな笑顔をつくろってみせた。
「お、俺、昨日ここに引っ越してきた安田です。よろしくお願いします!」
そして再度にこっと笑ってみせる。
(た、頼む...)
すると、彼女は突然の俺の挨拶が予想外だったのか、驚いて大きな目をまるくした。それから慌ててぺこりと頭を下げて、
「あ、こちらこそ...よろしく、お願いします。303の、音成です」
「え、303?!」
俺はつい大きい声を出した。
「そ、それじゃお隣さんじゃないですか!!」
(こんな可愛い女の子と隣に?!)
う、うわ、何か始まりそう。いやむしろ始まってください。こんな夢のようなシチュエーション、マンガでしか見たことないぞ?いやホントに現実だよな?!
俺はひとりあわあわした。それを見る彼女は...真顔。
そしてそれに気づいた俺も、真顔になりました。
「......」
「......」
お互い、沈黙。
3秒ほど見つめあったあと、彼女はぽつりと言った。
「...お隣の、音成です」
「......」
「......」
「......え」
えーっと、あの、ちょっと待って。この微妙な空気は俺が悪いの?
音成さんはうつむいてしまった。
(ちょ、マズイ!どうする?!でもギャグのフォローなんて一歩誤れば死だぞ...。)
俺がアタマをフル稼働させながら真っ青になって突っ立っていると。
...音成さんの肩が震えている。
(!? ま、まさか...)
泣いてる!? 俺のせいで!?
「あ、あのっ音成さん、俺っ...」
「ふ、ふ、ぷっ、あははは!」
「......え?」
俺はまばたきした。
音成さんは泣いているのではなくて、笑いをこらえていたのだった。
「あ、あの音成さん...?」
「ふふ、あっ、ごめんなさい!可笑しくて...」
音成さんはうっすらにじんだ涙を拭くとバツがわるそうに笑った。
「あたしのギャグを聞いて、絶対愛想笑いすると思ってたから。まさかこんなにぽかんとされるなんて、ふふ」
俺はその言葉にまたもやぽかんとした。
「ふふ、なんか安田くんてとても好い人ね。お隣さんどうし、これからよろしくね!」
音成さんはそう言ってにこっと微笑むと、手を振って隣のドアに消えていった。
(な、なんだったんだろう...)
俺は呆然としてその姿を見つめていた。
音成さんについて分かったことはただひとつ。
(笑顔がめっちゃ可愛い...)
目の前の女の子が可愛いことだけにしか気をとられてなくて、適当にそう答えたような記憶がある。
俺より頭ひとつぶんくらい背が低いその子は(まあ俺ももともとそんなに身長あるわけじゃないけど)、すらりとしたスタイルにすっぴんでも充分整った顔立ちをしていた。ラフなTシャツとショートパンツを身につけた彼女は、そんなふぬけた俺の返事に片眉を持ち上げてみせたが特に何も言うことなく、代わりに腕に抱いていたものを差し出してきた。
「これは...?」
「回覧板です」
彼女はやや尖った口調でそう答えた。
「あ、なるほど」
「これ、中身読んだらサインして、隣の301に回してください」
「あ、はい」
それだけ言うと、彼女が一礼して立ち去ろうとしたので俺は慌てて
「あ、あのっ!」
...呼び止めてしまった。
「...何か?」
女の子が振り替える。やっぱりまだ不機嫌そうだ。うわ、最悪。こんな可愛い子が住人なのに、出会って早々嫌われるなんて。な、なんとかしてマイナスイメージを払拭できる方法はないのか?
とりあえず、とりあえず何か...そうだ。
俺は最高に人当たりが良さそうな笑顔をつくろってみせた。
「お、俺、昨日ここに引っ越してきた安田です。よろしくお願いします!」
そして再度にこっと笑ってみせる。
(た、頼む...)
すると、彼女は突然の俺の挨拶が予想外だったのか、驚いて大きな目をまるくした。それから慌ててぺこりと頭を下げて、
「あ、こちらこそ...よろしく、お願いします。303の、音成です」
「え、303?!」
俺はつい大きい声を出した。
「そ、それじゃお隣さんじゃないですか!!」
(こんな可愛い女の子と隣に?!)
う、うわ、何か始まりそう。いやむしろ始まってください。こんな夢のようなシチュエーション、マンガでしか見たことないぞ?いやホントに現実だよな?!
俺はひとりあわあわした。それを見る彼女は...真顔。
そしてそれに気づいた俺も、真顔になりました。
「......」
「......」
お互い、沈黙。
3秒ほど見つめあったあと、彼女はぽつりと言った。
「...お隣の、音成です」
「......」
「......」
「......え」
えーっと、あの、ちょっと待って。この微妙な空気は俺が悪いの?
音成さんはうつむいてしまった。
(ちょ、マズイ!どうする?!でもギャグのフォローなんて一歩誤れば死だぞ...。)
俺がアタマをフル稼働させながら真っ青になって突っ立っていると。
...音成さんの肩が震えている。
(!? ま、まさか...)
泣いてる!? 俺のせいで!?
「あ、あのっ音成さん、俺っ...」
「ふ、ふ、ぷっ、あははは!」
「......え?」
俺はまばたきした。
音成さんは泣いているのではなくて、笑いをこらえていたのだった。
「あ、あの音成さん...?」
「ふふ、あっ、ごめんなさい!可笑しくて...」
音成さんはうっすらにじんだ涙を拭くとバツがわるそうに笑った。
「あたしのギャグを聞いて、絶対愛想笑いすると思ってたから。まさかこんなにぽかんとされるなんて、ふふ」
俺はその言葉にまたもやぽかんとした。
「ふふ、なんか安田くんてとても好い人ね。お隣さんどうし、これからよろしくね!」
音成さんはそう言ってにこっと微笑むと、手を振って隣のドアに消えていった。
(な、なんだったんだろう...)
俺は呆然としてその姿を見つめていた。
音成さんについて分かったことはただひとつ。
(笑顔がめっちゃ可愛い...)