――悪い話ではない……それどころか完全に良い話だ。

 いかに男女平等が叫ばれる世界であっても、やはり実情は男が優先される。
 私にしたところで、男の二倍、三倍と働いて初めてこの地位まで昇ってきた。

 今回の話は、私の若さで、しかも女であるのにも関わらず、本当に破格の条件だ。
 私にとっての不利は存在せず、いかに私を買ってくれているか、ということが良く分かる。

 それだけに――『どうして今なのだろう?』、という思いが浮かぶ。
 この話が昨年ならば。いや、せめて大樹クンと出会う四月よりも前ならば。
 それならば、私はきっと迷うことなくこの話に飛びついたであろう。

 しかし、今は……今はやはり迷う。
 この話を受けることは、私の仕事を認めてもらえたというのと同じことだ。
 これまでの努力がやっと実るということなのだ。

――でも……もう一つの努力もあって。