いんやー、落ち着いて飲もうと思ってたんだけど。
 美味しいとお酒って進むのよねー。

 それでも、いつもよりはずっと大人しいペースだけど。
 今日は、今日だけは絶対に酔わないんだから!むしろ酔わせる!酔わせて大樹クンの本音を聞きだしてみせる!

 と意気込んではみるけれど、それでも無茶はしない。
 大樹クンと二人きりで飲める機会なんて、この先一生訪れることは無いかもしれないのだから。

 いや、そりゃあ理想通りに大樹クンのお嫁さんになれれば、いくらでも二人で飲める機会はできるのだろうけど……さすがに難しいだろう。

 いかにこれが私の初恋だとはいえ、さすがに年齢を喰っているだけあって多少の経験はある。
 いや、恋愛だって似たようなもんなら経験してるし、少しは知っているつもりだ。
 
――夢と現実が違うことは……分かっているつもりだ。