「だ、大丈夫よ」

 まだ僅かに喉が掠れている感覚はあるが、声が裏返ることはなく小島に返事をする。
 トイレに籠ったことで、私はどうにか自分のペースを取り戻しつつあるようだった。

「本当ですかぁ? 無理しちゃダメですよぉ?」

 私を心配してくれているのだろう、小島のしゃべり方には少し遠慮を含んだような、くぐもった響きがあった。

「うん、スグに戻るから。ありがとうね」

 私の返事に、再度「無理はダメですよぉ」と言いながら遠ざかる小島の足音がトイレの外に至るのを確認して個室を出て――そのまま、トイレの洗面台に向かった。