大学に入ってからは……名前さえ覚えていないような人とも関係を持っていた。
 同じサークルの人や、同じゼミの先輩。
 バイトの同僚に、バイト先の社員と付き合った時期もある。
 付き合った時期が被っている人もいたりして、純情と呼ぶには程遠い……そんな経験をした時期もあった。

 ただ、それらの全てにおいて――今と同じような感情が芽生えたことは一度も無かった。

 これが……この感覚を『恋』と呼ぶのであれば、私が今まで経験していたものは……恋ではなかったのか!?

 ドキドキと鼓動を刻む心臓。
 勝手に紅くなっていく頬。
 フワフワと浮つく足元……。
 これを『初恋』と呼ぶには……証拠が揃い過ぎていた。