「あの……課長」

 そろそろ電話を切って、私も今日のところは家に帰るか……そう思って受話器を耳から離そうとしたとき、大樹クンが小さく呟いた。

 その声を聞き逃すような私じゃないよ!!
 何?何の用かな!?
 今から慰めて欲しいとかいう用件だったら三分でそっちに着く自信があるよ!
 大樹クンのためなら物理法則だって超越してみせるよっ!!

「え? どうしたの!?」

 冷静に返事をしようと思ったが、事態が一段落したという安心感がそれを阻害した。
 
……ウソです。大樹クンと話を続けられるのが嬉しくて声が上ずっただけです……。

「あ、いえ。その……今日はありがとうございました」

 いきなり私にお礼を言ってくる大樹クン。
 ん……?私、大樹クンに何かしてあげたっけ?