優しい世界の愛し方

借りたものを返すってこんなに難しいことだったっけ......?

己の不甲斐なさを恨みながら、私はため息をついた。

しかたない。明日また挑戦だ。

気が重いけど、渡さずにいるわけにはいかない。

金曜日には体育の授業だってある。それまでにはなんとかしなきゃ。

そう決意し、帰る準備に取りかかろうとしたその時。

「及川さん」

トゲのある声で名前を呼ばれた。

顔を上げると、朝来栖くんと一緒にいた女子3人のお姿。

その中の一人が廊下をあごで示し、こう言った。

「ちょっと来てもらえるかしら?」