その時の感情は覚えていない…。 ただドキッ…と心の何かが息吹いたのと ハッ…と全身の血が凍るような傷みに 思わず掴まれた温かい手を 全神経で振り払った気がしたあと 私達の間をさくようにその階の窓硝子 一斉に全ての窓が開け放たれて 渦巻く風が外の砂利や小枝や葉っぱを 巻き上げて襲いかかってきた。 突風に私達は突き飛ばされて両脇の廊下の壁に 軽くぶつかる。 ヒュウヒュウと音をたて私達の間を吹き荒らした風はやがてだんだん力ない音をたてとおざかってゆく。