車を見送る形になり、私は駅へと向かった。
いや…向かおうとした。
でも私の腕をつかむ人がいた…

「約束があるんじゃないのかな?」

そう言って私に声をかけてきたのは…霧島さん。
どうしてこんなところで?と思ったけど、すぐにもしかしてって考えに変わった。

『部長と一緒にお食事していたのって霧島さんですか?』

「うん。まあね。
 で、美咲ちゃんと会えるかと思って一緒に来たんだけど…
 本当に用事あるの?」
見透かしているようなその目に私は嘘を通すことはできず…
『それは嘘です。
 あの二人の間にいるのはいたたまれないので…』

「じゃあさ。さっきの嘘を本当にしようか…
 一杯付き合ってよ。」

霧島さんは優しいようで実はわがままな気がする。
だって、自分が言い出したら絶対に引かなさそうだもん…

私はそんなことを考えながら、霧島さんと一緒に一軒のバーに入った。