piano

「それは、きっと」

がちゃり。


少年が答えるよりはやく。
前置きなしに、ドアが開いた。

現れたのは、おばあさんと、その腕に抱かれた黒猫。

突然すぎて、少年も隠れる暇がなかった。


「他人の家に忍び込むなんて、趣味が悪いにも程があるね。しかも、私がいる家にだなんて」

「何だと、この幽霊ばばァが!」


「幽霊?」


ハッキリ言って急な展開についていけていないサヤが、ふと聞き返した。

「このばあさん、もう5年も前に死んでんだよ!」
「ばばァって呼んだね?」

少年の声に被せるように、おばあさんが訊く。確かめるように。

「言ったけど!?」

「態度が悪いね、如月。さすがはあの親の子供。あぁ、こんなのが孫だなんて、信じられない屈辱。

許せない……!」