「サヤ〜」

久しぶりに、母親が家に帰ってきたのは、その翌々日のこと。

「前の人、いなくなっちゃったから、新しい人を雇うことにしたわ」


前の人、というのはあのおばあさんのことだ。

サヤは閉じ込められていた日々を思い出し、慌てて首を振る。


「大丈夫、誰も雇わないでも、わたし一人でも生活ちゃんとできるから」

「えぇ〜、でも、最近物騒だし。未成年の子ども一人家においとくのも不安だから〜」

「……どんな人?」


母親が一度こうと決めたものは、何を言ったって変えられやしない。

そう分かっているから、サヤは諦めてそう訊いた。


母親は、訊いて欲しかったようで。

サヤの質問に目を輝かせて語りだした。


「それがね〜! 如月君っていう子なんだけど、急にご両親を亡くして身寄りもなくてどうしようかってときにうちの求人見たらしくて、電話くれたのよ。

如月君? サヤよ。隠れてないで来てちょうだいっ」