『父様、聞いて下さい!』
『ゆのは、お前は何も心配する事はない。高井はこちらで処分を下す。』
『何いって…』
私のせいで、高井先生が辞めさせられる?
私が本当の事を言わないせいで…
『大体、あいつも恩知らずな奴だ。体を動かす事しか頭にない馬鹿の分際で私の娘に手を出すとは。』
「なぁ」とばかりに父様は広田さんに同意を求める。
何…?
何で、高井先生は何にも悪くないのに、悪く言われているの?
『父様、高井先生は何にも悪くありません!それに、高井先生は私にとって親みたいな人なんです!』
そう言うと、父様は『親?あいつが?』と大笑いした。
私はそんな父様の態度に腸が煮えくり返っていた。
んの~糞爺!ともはやお嬢様言葉など、どうでも良くなった私は脳内で糞爺を存分に罵っていた。
『何が、可笑しいのですか?』
こんな糞爺でも、父は父なので、敬語を使う。
『さっきも言ったが、あいつはただの運動馬鹿だ。それに嫌気がさしたあいつの奥さんは子供を連れて出ていった。それから月に多額の養育費を元妻に払っている。あいつは元は空手の選手で、現役時代の貯金はあっという間に消えた。あいつの父親と私が交流があった為、あいつをお前等の先生として雇ってやったと言うのに…。あいつは、どうしようもない駄目人間だな。だから、嫁にも逃げら『止めて下さい!』
知らなかった。
高井先生の過去…
でも、『高井先生の事を悪く言われないで下さい!』と私は父様に向かって言った。
『ゆのは様、旦那様は事実を述べているのですよ。』と広田さんは言った。
事実…。
事実って何?
高井先生が運動馬鹿って事?
そんなの私でも知ってる。
稽古中の高井先生は本当に楽しそうに武道をしている。
『ゆのは、いい加減高井を庇うのは止めない。あんな奴を好きになったて後悔するだけだ。』
本当に、この爺は…
一体、私を何回苛つかせるんだろう。
『広田、すぐに高井を処分しろ。それと、人の娘に手を出したんだ、慰謝料も貰ってこい。そうだな…金額は一億だな。それで、あいつ自身も破綻してしまえばいい。』にやっと笑う父様を見た私はついに堪忍袋の緒がキレた。
『糞爺…』とボソッと呟く。
『ん、何か言ったか?』
『テメーだよ!この糞親父!』と私は糞親父の机をばんっと叩いた。
『なっ、ゆのは!父親に向かって、その態度は何だ!』

