『高井先生!』

私は部屋に向かってすぐ、稽古場へと向かった。

するとそこには、柔道着を着た高井先生が立っていた。

『ゆのは。』

高井大(タカイ マサル)

私がもっとも信頼していて、尚且つ私の大好きな人!

『高井先生、今日来て下さったのですね。』
『ああ。悪いな、急に来てしまって…』

『いえ、私は大歓迎です!本日もお願いいたします。』と言った後に、私は高井先生にお辞儀をした。

『おう!でも、その前に髪はちゃんと結べよ。』

『あっ…はい!』

私は急いで稽古場に来たものだからつい、髪を結うのを忘れてしまった。

ー2時間後ー

『ありがとうございました!』

『お疲れ。』

『いい汗を掻きました。』と私はタオルで汗を拭きながら言った。
『そうか、流石ゆのはだな。』

『流石って…高井先生の方が遙かに凄いですよ。私は感情のままに動いているだけですので。』

私は俯きながらそう言った。

『やっぱり、何かあったのか?』

『分かります?最近、父様と母様に会えていなくて…』

悲しい気持ちになる。
『成る程な。そりゃあ悲しい気持ちになるよな。』

『はい。寂しいけど、「寂しい」って言えませんので、余計に悲しくなります。』

『言ってみたら?』

『えっ?』

『ゆのはの本当の気持ち。』

『私の気持ち…』

伝えたい。

私の事をもっと知って欲しい!

『頑張れそうか?』と高井先生は優しく言った。

『頑張ってみます。ちゃんと、父様と母様に私が思っている事を伝えたいと思います。』
そう言うと、高井先生は『頑張れよ』と言って、私の頭を撫でた。
『はい。』



私はずっとこの時間が続けばって思っていた。

高井先生は私の大切な存在であり、私の親みたいな人。

私がそう思えるなんて。

武道の稽古は父様の『ゆのは、お前は女の子なんだ。から、自分の身は自分で守れ。』この一言から始まった。
それは私がまだ、幼稚園生の時の事。

初めは凄い嫌だった。
から、高井先生が凄く怖く感じていた。

でも、高井先生はとても気さくで、私はすぐに高井先生が好きになった。

さっきみたいにどうしたらいいのか分からない気持ちにちゃんと答えをくれる。

から、頑張るんだ!

自分の気持ちをちゃんと伝えよう。


3日後

『えっ…父様、今何と言いましたか?』

…嘘だ。

何で、こんな急に?

『ゆのは、武道の稽古はもう止めなさい』