『ゆのはお嬢様。お帰りなさいませ。』
と、執事の鈴木さんはポルシェの前に立ち、私にお辞儀をした。
『ただいま、鈴木さん。今日もありがとうございます。』
そう言うと、鈴木さんは車のドアを開けながら、『お嬢様、どうぞ。』と言った。
私は『ありがとう』と言い、車に乗り込んだ。
私が通う夏目学園はホテルみたいな造りになっている。
校門をくぐると、まず広々とした駐車場が見られる。
その駐車場は来賓の方や保護者の方が学園を訪問する為にと造られた。
駐車場の後ろには3階建ての校舎が建っている。
この校舎は高等部で、中等部、小等部、幼等部はその後ろに建っている。
高等部の校舎の横には温室が建っている。
そして、中等部、小等部の間には噴水が建っている。
幼等部の近くにはプールや公園の遊具が建っている。
他にもテニスコートやスケート場やショッピングモールなどもある。
『ゆのはお嬢様。お帰りなさいませ。』
花鴫家に着き、鈴木さんが門を開けると、使用人の方がずらーっと並んでいた。
『ゆのは様、お鞄を。』と家政婦の真紀さんは手を差し伸べながら言った。
私は真紀さんに『ありがとうございます。』と言い、真紀さんに鞄を預けた。
『真紀さん、父様と母様は今日帰ってくるのかしら?』
真紀さんは首を横に振りながら、『いいえ。旦那様は明日から海外へ行ってしまうので、今夜は帰って来ません。奥様は仕事が忙しく帰ってこられないこと事です。』と言った。
『そう…。』
最近、なかなか父様と母様には会えないわ。
『ゆのは様、本日は高井様がおいでになられていますよ。』
『高井先生が!?』
『ええ。いつもの場所で待っているとの事です。』
『分かったわ。真紀さん、ありがとう。』
私は急いで階段を駆け上がり、自分の部屋へと向かった。
(高井先生、来てくれたんだ…。)
高井先生は私にとって、武道の先生である。
私は小さい頃から、高井先生に空手、柔道、剣道を教えてもらってきた。
もはや、高井先生は私にとって親代わりと言っても良いくらい、私にとって大切な存在だ。