心を全部奪って

霧島さんの口から出た言葉が意外過ぎて、私はすっかり固まっていた。


そ、それって…。


「聞こえてる?」


「き、聞こえてますよ」


「じゃあ、して」


「い、今ここでですか?」


「あぁ。

わかってると思うけど、ここにな?」


そう言って自分の唇に、チョンと人差し指を置く霧島さん。


う、うそでしょ?


浜辺にはそこそこ人がいるし、海岸を歩いている人もいたりするのに。


っていうかキスなんて、前に許可も取らずに勝手にしたじゃない。


なんで今?


「早く」


「えぇっ」


ど、どどどうしよう。


でも多分、ちゃんとしないとまた脅される。


仕方なく私は砂浜に両手をついて、ゆっくり霧島さんに顔を寄せた。


ぎゅっと目を閉じて、軽く触れるだけのキスをする。


あぁぁ、恥ずかしい。


すぐにパッと顔をそらして離れようとしたら、霧島さんの手が私の後頭部に伸びてきて。


グッと引き寄せられて、唇を重ねられた。