心を全部奪って

しばらく熱血指導が続いた後、


私はまたソフトボールのブースに押し込まれていた。


「頑張れ。一回でもいいから当ててみろ」


「えー…」


ボールがヒュンと飛んで来て、どうにか当てようとするけど、やっぱり空振り。


「いい。いい。

タイミングは悪くない。

もうちょっと高めかな?」


必死にアドバイスしてくれるけど、一向に当たりそうにない。


「ボールちゃんと見てるか?

もしかして見てないんじゃないのか?」


「あ…」


そう言われてみたら、バットを振る時に瞬間的に目を閉じちゃってるかも?


そうか。


ボールを見ればいいんだ。


機械がウィーンと回転して、


四角い穴からひゅんとボールが飛んで来る。


今だ!


「えいっ」


思い切ってバッドを振った瞬間、カキーンと良い音がした。


そしてバットに当たったそのボールは、真っ直ぐ高く飛んで行った。