心を全部奪って

数分後。


ヨタヨタとブースから出て来る私を、霧島さんは思いっきり呆れた顔で見ていた。


「お前、どんだけ運動音痴なんだよ」


結局私は一回もバットにボールが当たらなかった。


フラフラして、もう倒れそう。


「だからイヤだって言ったのに」


「あのな、まず構えからしておかしいんだ。

バットを持つ位置も変だし、手が上下逆じゃねーか」


「だって、知らないんだものー」


「大体、足揃えて突っ立ってて当たるワケないだろ?

足をこう開かないと。

あと腰の動きな」


「いいよー。もうやらないし」


「おまっ。あきらめるの早過ぎ!

あのな、こうするんだ」


そう言って私の後ろに立つ霧島さん。


後ろから抱きかかえられるように、両手を握られた。


「脇も閉めるんだ。

こう振る。わかる?こうだ。

手首はこう返す。な?」


やたら熱心に指導してくれるけど。


ハッキリ言って、全然興味がないんですけどーーー。