心を全部奪って

「あの、霧島さん?」


「あー?」


「これ、霧島さんの車なの?」


随分可愛いデザインだけど。


「いや、シェアカー」


「えっ?

それって、借りてるってこと?」


あたしの問いに、チッと舌打ちをする霧島さん。


「あのなあ、都内に住んでて車なんか持ってたら、維持費がかかるだけだろ?

たまにしか乗らないなら、これで充分」


「へぇ…」


確かに、乗りたい時だけ借りた方が、賢いかもしれないね。


ちらり、運転をしている霧島さんに目をやる。


今日の彼は、ボトムにジーンズ。


真っ白いシャツの上に、綺麗な水色の襟付きシャツを羽織っている。


なかなか運転慣れしているみたいだけど、


休日によく乗ったりしてるのかな?


「あのー、どこへ行くんですか?」


「んー。どうするかなー。

最近ちょっと身体がなまってるし、

バッティングセンターにでも行くか」


バッティングセンター?


そんなの一人で行けばいいじゃないか。


なんで私がお供しなきゃなんないのよーーー!!!