心を全部奪って

あらためてそう言われると、


なんだか泣きたくなってくる。


工藤さんと付き合う事を決めた時に、


そんなことは全て承知だったはずなのに。




私達はどこへも出かけられない。


ただ私の部屋に来て、一緒に食事をして、ベッドで抱き合うだけ。


いつか旅行でもしたいねって話しているけど。


そんなのいつ実現するかわからない。


悲しくないって言ったら、嘘になる。


私だって本当は、工藤さんと堂々と外を歩いてみたい。


今みたいに、工藤さんと夜景を見たりしてみたい。


でも、どんなに願ったって


それだけは叶わない夢なんだ。


「どうしてそんな、


悲しい恋を選んじゃったのかね…」


霧島さんが少し困ったような顔で言った。


その顔を見ていたら、目に涙が滲んでしまった。