心を全部奪って

「俺以外に工藤課長と不倫してること、知ってるヤツっているのか?

たとえば、仲の良い友達とか」


「ううん…。

誰にも言ってない…」


不倫しているだなんて。


友達に言えるわけない。


あっけらかんと話せる人も世の中にはいるみたいだけど。


軽蔑されそうで、私は絶対に言えない。


「ふぅん…。

そりゃまた随分孤独だろうねぇ…」


夜景を見ながら、霧島さんがポツリ呟いた。


「普通の恋人同士なら、

今みたいにこうやって、堂々と夜景を楽しめるし。

どこでご飯を食べようが、お茶しようが、お酒を飲もうが。

誰に咎められることもないのに…」


霧島さんが私の顔をチラリと見た。


なんとなく悲しそうに見えて、トクンと心臓が音を立てた。