心を全部奪って

「そうかぁ。やっぱりそうかー」


「えっ。やっぱりって何?」


「うんうん。なるほどなあー」


「もうっ。何を一人で納得してるの?

じゃあ今度は、拓海君のお願い事を教えて」


「やだねー」


「なっ。ずるいー」


俺を叩こうと手を振り上げるひまりからスルリと抜けて、俺は歩道を走り始めた。


「ちょっ。なんで逃げるのー」


彼女が追いかけてくるのを確認しながら、俺はひたすら走って逃げた。


そんな俺とひまりの様子を、道行く人が不思議そうに見ているけれど、俺はこんなやり取りが嬉しくてどうしようもない。


まぁ、アホなんだけど。


しばらくそんなことを続けて、次第に走るペースを緩めていく。


今がチャンスとばかりにひまりが俺に近づいて来て、


俺の腕にガシッと掴まった。