心を全部奪って

ひまりの手をぎゅっと握って、また見ぬ街を探検する。


細い路地に入ってみたり。


野良猫に触ってみたり。


おいしい匂いに誘われれば、それを分け合って食べた。


ただ思いつくまま、気のむくまま。


ひまりが隣にいれば、どんな景色だって輝いて見えるから。


その一瞬一瞬を、大切に心に刻み込んでいる。


「ねぇ、拓海君」


ひまりが俺の名を呼ぶ。


いつの間にか、俺を名前で呼ぶようになったひまり。


距離がぐっと近付いたみたいで嬉しい。


「さっきの絵馬のお願い事だけど、拓海君はなんて書いたの?」


「どうした?聞きたい?」


「ん?うん…」


そんなことが気になるなんて、可愛いよね。


「聞きたかったら、先にひまりの願い事から教えて」


「えぇっ?私?」


逆に聞き返すと、顔を真っ赤にさせるひまり。


そんな顔されると、絶対聞き出したくなる。


「ほら、教えて」


そう言って、ひまりに耳を寄せた。


「い、今言うの?」


「早く早く」


ひまりは一度はぁと息を吐くと、そっと俺にその願い事を話し始めた。


俺はそれを聞きながら、にんまりと笑った。