心を全部奪って

「居酒屋で働きながら、ゆっくり自分のやりたいことを探そうと思ってはいるけど。

でもね。

見つからなければ見つからなくてもいいかなあって、今はそう思ってるの」


「そうなのか?」


「うん。

だって私ね、今充分過ぎるくらい幸せなの」


「幸せ?」


「うん。

だって、拓海君とこうして一緒にいられる。

それが何よりも嬉しいから」


「ちょっ。なにそれ?

可愛過ぎるんだけど」


拓海君が目を丸くさせる。


「な、なぁ。

もう部屋に帰ろう」


「え、どうして?」


せっかく楽しいのに、もう帰るの?


ぎゅっと眉を寄せて顔をしかめていたら、拓海君が私の肩をそっと抱き寄せた。


「だってさ、昨日の夜してないし。

抱きたくなった…」


ボソッと耳元で囁く拓海君。


「ちょっ」


神社で何てことを言うのよ!


「やだ!まだ帰らないー」


そう言って立ち上がると、私は急いで走って神社の門をくぐった。