心を全部奪って

「確かにあんなふうに人に裏切られたら、また人を信じるのは怖いだろうと思うよ。

俺がどれだけ信じろって言ったって、それが信じられないのもよくわかる。

だけどさ…」


そう言うと霧島君は、私の両手をそっと握った。


「俺は、朝倉と一緒にいたい。

俺ならあんたを笑わせてやれる。

悩む暇なんか与えてやれないくらいにね。

別に、俺のことを信じようとしなくったっていい。

ただ一緒にさえいてくれたら…。

きっと、楽しいと思うよ?」


ゆっくり。


小さな子に言い聞かせるように。


霧島君はひとつひとつ丁寧にそう言った。


なんだか胸がいっぱいだった。


堪えきれずにポロポロと流れる涙を、霧島君が人差し指で拭ってくれる。


「俺が嫌いなら、どうしようもないけど。

ちょっとでも好きなら、

その可能性があるなら……」


どうしよう。


本当にいいの…?


私なんかでいいの…?


不倫なんてしていた私でも。


「朝倉の本当の気持ちを

正直に教えて……」


苦しそうに問いかける霧島君。


その顔を見ながら、私はゆっくり息を吸った。