心を全部奪って

「あの社内一のイケメンを、どうやって落とした?

よほどのテクニシャンなのか…?」


フッと私の耳に息を吹きかける霧島さん。


お酒の匂いがして、思わずケホッと小さな咳が出た。


「あの人、将来有望だよ?

もし不倫なんかしてることが会社にバレたら、どうなるかな?」


「やめ、て…。

お願い。

誰にも言わないで」


私はどうなってもいいけど。


工藤さんが社会的立場を失うのは耐えられない。


「どーしようかなー。

別に俺、あの人がクビになろうがどうなろうが、知ったこっちゃないしなー」


「お願い…します…。

あなたの言うことに従うから」


バラされるわけにはいかない。


何があっても、絶対に……。


「まぁ、あんたはそう言うだろうと思ったよ。


いいよ。


言うか言わないかは、あんた次第ってことにしてやる。


場合によっちゃ、いつ口を滑らすかわからないから。


せいぜい俺の機嫌を損ねないようにするんだな…」