心を全部奪って

「何が…、望みなの…?」


私と工藤さんが不倫していると知っていた上で、わざとこの部屋に招き入れたのよね。


何か目的があるんだわ。


脅されるのかな。


もしかしてお金…?


それとも、やっぱり…。


「このままヤるのもいいけど、それじゃあっさり過ぎてつまんねーし。

どうするかな?」


スルリと私の頬を撫で上げる霧島さん。


その感触にゾクリと鳥肌が立った。


「口止め料として…。

そうだな。

俺の言うことを何でも聞く、奴隷にでもなるか?」


「奴隷…?」


「じわじわ追い込んで、苦しめて。

苦痛に顔を歪めるあんたを見るのも面白いかもな」


「あなた、最低ね…」


まるで天使の顔をした悪魔だわ。


こんな二重人格な人、初めて出会った。


「どっちがだよ。

俺は、人様のモノを奪ったりしねーけど?」


思わずグッと下唇を噛んだ。


悔しいけど、彼の言う通りだ。


どんなに工藤さんを純粋に想っていたって。



最低な泥棒猫は、



私の方なんだ……。