心を全部奪って

人事部長にそう言った直後、身体中が震えた。


全てひまりの責任にして、自分はそこから逃げたんだ。


でも同時に、


これで子供を失わずに済むって、


心のどこかで安心している自分がいて…。


自宅待機を命じられたこともあって。


その日のうちに、妻の実家に妻を迎えに行った。


妻の実家の近所を散歩しながら、


久しぶりに二人でゆっくり話をした。


妻は、俺に好きな女性がいることに気づいていた。


いつか自分が捨てられることも覚悟していたと。


別れようと言われたら、応じるつもりだったのに。


きっとこの赤ちゃんが、あなたを引き止めてくれたのねって…。


そう言って妻は泣いた。



『別れちゃだめ』



子供がそう言ってるような気がして…。



俺も、



一緒に泣いたんだ…。