心を全部奪って





「霧島さん、頼まれていた資料です」


「あ、どうも。

ありがとうございます」


朝倉の後任で俺のアシスタントになった原田さん。


どんな仕事でもそつがないし、処理も早くて、ありがたい存在ではあるけれど。


以前、そこに座っていた人のことを思うと、胸が苦しい。


ぽっかり空いてしまった心の穴は、どうやったって埋まらない。


つい先日、佐藤部長のところへ訪問した。


『朝倉さんは元気?』


佐藤部長には、担当が原田さんに代わったとしか伝えていないから、朝倉の処分については知らない。


『元気ですよ』


そう答えた後、なんだか泣きそうになった。


以前、この場所で商談をした。


無理矢理、朝倉を連れて…。


あんたに、いいとこ見せたくて。


絶対、契約とってやるって


馬鹿みたいに張り切ったんだ。


『別に…。

大したことねぇよ』


あんたに褒められて嬉しいはずなのに。


あの頃の俺は、


ちっとも素直じゃなかった。